2023年10月7日、衝撃的なニュースが世界を駆け巡りました。パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスが、イスラエル領内に侵入し数多の民間人を殺傷するという事件です。その模様はハマスによって配信され、凄惨な画像はイスラエルだけでなく世界に衝撃を与えました。
イスラエルはハマスを武力で殲滅する方針とし、近く大規模なガザ地区への地上侵攻が予想されています。またすでに空爆で大勢の死者が発生しています。
今回の事件では、欧米諸国が相次いでテロ組織ハマスをISISになぞらえて糾弾し、イスラエルへの完全な支持を表明しています。
果たして、これは正しい姿勢なのでしょうか?私はどうしても違和感を覚えてしまいます。
もちろん、ハマスの一般市民への残虐な行為は非難されるべきですし許しがたいテロ的行為です。また、人質を取ってガザ地区に連行するなど、正当化の余地はありません。
ただ、今回の事件は何も問題のない平和な土地にふと現れたテロ行為ではありません。今までの長い歴史の中で問題が累積し、パレスチナの人々の怒り、嘆き、失望感が蓄積してきた土地です。とくに今回の被害者であるイスラエルは、国際法違反である占領地に対する入植活動を推し進め、パレスチナ人の土地を不当に奪ってきました。また検問所を設けパレスチナ人の出入りを制限したり、将来のパレスチナ国家の首都とされる東エルサレムから土地の収奪を進めたり、ガザ地区を封鎖しよく言われるように「天井のない監獄」と言われる状況に追いやってきました。
ガザ地区では2007年のハマスによる支配が開始されて以降、数回にわたりイスラエルと武力衝突を繰り返してきましたが、その度にイスラエルの被害をはるかに上回るパレスチナ人の被害がもたらされました。
今回、イスラエルは自身の被害を強調し、ハマスへの報復を民間人の犠牲を伴う形で行っても許されるように国際世論を誘導していますが、今までの経緯を知っている人ほどその試みは上手くいかないでしょう。
たしかに、ユダヤ人が第二次世界大戦時に耐え難い苦しみを受けたことは事実です。そして、国際社会を当てにせず、自身は自身で守るという決意を他民族とは比べ物にならない強い気持ちで抱いているのも理解できます。
しかし、自分がやられて嫌なことを人にはしない。
という、子どもなら誰でも言われたことのあることを、なぜ彼らはできないのでしょうか?
今回イスラエルが被害者なのは間違いない。しかし、その裏にはイスラエルの空爆で、軍の銃弾で、殺されたパレスチナ人が数多にのぼるのです。
この地域に当事者全員が望む形で平和が訪れることは極めて困難です。しかし、だからこそ国際社会は、背景の歴史、双方の気持ちを踏まえて対話を促進する努力、そして場合によっては圧力を掛ける必要があるのだと思います。
また、西側諸国の一方的なイスラエル支持も問題となる可能性があります。まず1点目として、今回中東諸国で広がるパレスチナへの連帯を西側諸国と対立する中国やロシアに利用されることです。事実、中国やロシアはどちらかというとパレスチナ寄りの意見を表明しています。グローバルサウスは植民地時代の歴史などもあり、抑圧されている側に同情的です。今回の出来事で、グローバルサウスの西側諸国への支持が減じてしまう可能性があると思います。
そして2点目として、今なお続いているロシアのウクライナ侵略にも影響が出る可能性があります。現在ロシアはドネツク州に攻勢を強めていますが、そのニュースも今回のパレスチナ情勢であまり注目されていません。
また、ロシアの侵略以上に両論あるパレスチナ問題で、西側諸国が一方的な意見を表明すると、そのある意味ダブルスタンダードとも取れる姿勢に失望し、国際社会のウクライナに対する連帯が弱まる可能性があるのです。
今回の事件で日本が果たせる役割は大きくはありません。中東諸国やイスラエルと良好な関係を保っているとは言え、その影響力は限定的なためです。
しかし、私たちは世界の不条理に関心を持ち、世界の中での日本の立ち位置を常に考える必要があります。それは、国力が低下してきている日本が、国際社会で今後も上手く立ち回るために欠かせないことだと思っています。
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